始まりなんてろくなことない

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      春特有の暖かい風が紅い髪を撫でる。 この国の観光の目玉兼産業の要、革張りで作られた大風車が盛大に回っている。空は晴天だ。気分は曇天だが。 「あーあー。もしかして見納め的な空ー...?」 泣きたくなる。両親は空の彼方――だし友人には騙され借金背負わされるし。借金取りのお兄さんには(怖いくらい)素敵な笑顔で 「体バラして売るか、騎士団に入って豪快に返すか坊主?」 なーんて色付きサングラスがキラリと光って言うもんだ。恐ろしいったらない。 「魔物退治にゃ国は力をいれてるからなぁ~。高級魔石も採れるしウハウハなわけ、わかる?」 人の顎を掴んで頭を揺さぶってくるし。 「で、坊主はその魔石を斡旋すりゃいいんだよ」 ちょっ、犯罪。それ犯罪。魔石の勝手に流出することは国益を著しく妨害するってことで結構な刑罰がある。魔術王国であるユーザリスティラにとって魔石は国益の3分の2も占めている。刑罰が重くても仕方ない。 「わいの知り合いがビジリアンっつうとこに居るから、そいつに斡旋。段取りわかる?」 ああ、決定なんですね。拒否権も選択肢もないんですね。     こうして俺は変人の巣窟へと入ることになった。
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