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振り返った先には、わりと小柄な女性が立っていた。
ムートンブーツやファーの帽子、長いストール。
流行を取り入れたファッションをした、おしゃれな人。
可愛いというより、綺麗という言葉が似合う人。
俺は黙って、彼女を見つめてしまった。
「宮部君、一目惚れ?」
「ちょっ!直幸さん、からかわないでくださいよ!」
「そんな、ムキにならなくても。顔真っ赤だよ?」
「直さん、あんまりからかいすぎたら可哀想ですよ。直さん、人をからかうの好きだから。あんまりマジにならない方がいいよ?」
「あ、はぁ。」
「最近引っ越して来たんだよね?私、隣に住んでる佐々木楓(ささきかえで)です。洋服の販売員してるの。これからよろしくね。」
佐々木さんが、手を差し出してきた。
俺はその手を取り、握手しながら答えた。
「あ、俺はこの春から大学生になります。ご迷惑かけるかもしれませんが、よろしくお願いします。」
「学生さんなんだ!若いねぇ。」
「そんな、佐々木さんだって若いでしょ?」
「いやぁ、10代ってだけで若いのよ。私、宮部君の4つ上よ。」
「ほら。そんなに変わんないっすよ。」
「4つ差は大きいぞ。」
「そんな事言ったら、実優の奴どうするんだ?」
「あっ!」
俺たち3人は、顔を見合わせて笑った。
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