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階段を上がり、お互いの部屋の前に立った。
佐々木さんの方を見ると、佐々木さんは203号室を見ていた。
よく見えなかったが、佐々木さんが悲しそうな表情を浮かべているように見えた。
「佐々木さん?」
呼ぶと、我に返ったように笑顔で俺の方を見た。
「あの、203号室の人って見たことあるんですか?俺、まだ一度も会ったことなくて。」
「あるよ。彼ね、夜の仕事の人だから。夕方には出て、朝帰ってくるの。だから、なかなか会うことないと思うよ。」
「あ、そうだったんですか!?俺と真逆な生活だから、会わないんだ。」
「私も初めは空き部屋かと思ったわ。それじゃ、またね。」
「あ、引き留めちゃってすいません。」
いつもと変わらない笑顔で、部屋の中に入っていった。
さっきの悲しそうな顔は、見間違えだったのか?
203号室の表札に書かれた、『高橋(たかはし)』という名前を見た。
夜の仕事って、やっぱホストとかなのかな?
駅前の商店街と反対側は飲み屋街が広がっている。
そこで働いてると考えれば、不思議じゃないな。
洗濯物干してないのも納得。
ホストじゃ、クリーニングとかで済ませちゃいそうだもんな。
直幸さんが顔色変えたのは、ホストって職業だったからなんだろうか?
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