上京

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「あの、契約書先じゃなくていいんですか?」 「えぇ、構いませんよ。荷物の片づけが終わったら、上に来てください。上にいない場合は、下のコンビニに行らしてください。」 「下のコンビニも、大家さんの経営なんですか?」 「えぇ。正しくは、主人のものなんですけどね。」 「主人!?結婚なされてたんですか?」 俺のあまりの驚きように、大家さんはクスクス笑っていた。 俺は恥ずかしくて、顔を真っ赤にしてしまった。 「私、あなたより一回りほど年上よ。ここの大家とコンビニの店長は、私の主人の吉岡直幸(よしおかなおゆき)。私は妻の吉岡実優(よしおかみゆ)です。よろしくね。」 「あ、よろしくお願いします。」 実優さんが手を差し出したので、握手をした。 その後、実優さんは3階に上がっていった。 俺は下に下りて、荷物を運んだ。 家電も時間通りに届き、洗濯機や冷蔵庫などは所定の位置に置いてもらった。 その他の家電は適当な場所に置いてもらい、部屋を片しながら親父が配線なんかをやってくれた。 ダンボールからだいたいの荷物を出し、程よく片づいたところで実優さんを呼びに行った。 何度か呼び鈴を押したけど、応答はなかった。 下のコンビニを覗いても実優さんは見あたらず、レジにはアルバイトの男性がいた。
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