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森へ入ってどれくらい時間がたっただろうか。
男は家に時計を置いてきていた。
これから死ぬ者にとって時間など無意味だと思ったからだ。
実際は30分ほどであったろうが、もう一時間以上歩いた気になった。
それほどに身の丈ほどの草木を掻き分ける作業や道なき道を進むことは面倒なことであった。
男は後ろを振り返った。
もはやどこから来たか判別するのは難しくなっていた。
ただ、まだ戻ろうとすれば必ず戻ることが出来る気はした。
男はそのことにやや不快感を抱き、さらに森の奥へ進むことにした。
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