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プロローグ
市立香彩(カサイ)高校に入学してから、もう一年半。
入学当初から、自他共に認める美少女であるあたし―天宮璃沙(アマミヤ リサ)に心を奪われた男子は多く。
廊下を歩いていれば声を掛けられたし、荷物を持っていれば誰かが代わりに持ってくれるのが当たり前だった。
そうまさに「学園のアイドル」というやつだ。
美少女たるあたしに相応しいそんな華やかな日々に満足していたのも束の間。
男子にひっきりなしに告られるのに疲れるわ、周りの女子からは妬まれて地味な嫌がらせをされはじめるわでそんな日常に嫌気がさし。
そういった周りを黙らせるため、適当に顔が好みだった同級生の来栖聖(クルス ヒジリ)に告白して付き合い始めたのが、入学してから半年後のこと。
それからは、女子からの嫌がらせは減り、面倒な男どもから告白される回数も激減した。
誰もが認める美少女のあたしと、その美少女のあたしと釣り合える程の美少年ではある聖。
あたしは「学園のアイドル」から、「理想のカップル」としての華やかな学園生活をスタートさせたのだった。
それから一年後──。
あたしは一年前に聖に告白した屋上にいた。
屋上には、あたしと聖だけ。
…一年前と同じシチュエーション。
だけど──…
「璃沙ちゃん、別れて欲しい。…僕、好きな人が出来たんだ」
「……好きな人?どこの女よ?」
「いや、女の子じゃなくて……実は、僕…男の人が好きなんだ」
「………は?」
付き合い始めて、一年後。
私は「理想のカップル」になった場所で、史上最悪のフラレ方をされた「フラレ女」になった。
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