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第2話「罪悪感」
――傷つけてしまった。
最初に感じたのはまず罪悪感だった。だって、プライドの高い彼女の―璃沙ちゃんのことだから、僕から別れを切り出すことは、彼女を深く傷つけるんだろうってこと、分かってたのに。
―でも、自分の中にある確かな気持ちを否定したくはなくて。実らなくったって良い。ただ、中途半端な気持ちのままに付き合っていくことは、自分にも―そして何より璃沙ちゃんに悪いことだと思ったから。
僕は、その言葉を彼女に伝えた。
後悔がなかったと言えば、嘘になる。もっと良いやり方があったかもしれないって、彼女にそう伝えた日の夜にずっとずっと考えたけど。
結局、今以上に良いやり方は浮かばなくて、大きくため息を吐いた。
「どうした?元気ないぞ」
「優斗…」
いつもよりも優しい―でも、ぱっと聞いた感じはやっぱりぶっきらぼうな言い方で、友人であり想い人でもある、草壁優斗(クサカベ ユウト)は、淡々と言葉を紡いだ。
初めは全然分からなかったけど、今は少しだけ分かるようになった彼の優しさが嬉しくて、笑みを浮かべた。
そして、その笑顔のままに大丈夫だよ、と続けようとしたところで、優斗の低く落ち着いた声が僕の鼓膜を震わせた。
「…無理して笑う必要はないだろう。俺達は、友達だろう?」
何を遠慮をすることがあるんだ、と言いたげなまっすぐな視線に思わず涙が零れそうになる。
彼のまっすぐな言葉が、やさしさが嬉しくて……切なくて。
素直に、この気持ちを彼に伝えたらどうなるんだろうって考えて、自嘲気味に笑った。
―優斗は優しい。
たとえ、まっすぐに僕の気持ちをぶつけたとしても、僕のことを気持ち悪いとは言わないだろう。
でも、そうやって優斗に余計な気を遣わせること自体が嫌だった。
そして、その言葉を発した瞬間に、この関係は崩れる。
元には、絶対に戻らない。
そんなこと、痛いくらい分かってるから。
僕は、心配そうに見つめる優斗にただ曖昧に笑って見せた。
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