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頬に当てられたのは、冷たい缶のお茶だった。
「あ、あの……」
「冷たいもの飲んだら少しは落ち着くよ。あ、奢りだから代金は気にしないで」
彼女がそう言った瞬間、ざわざわと煩い構内にアナウンスが鳴り響いた。
『本日もご利用いただき、まことにありがとうございます。お客様に、お知らせいたします。午前七時二十八分発、槻舘(つきだて)行き列車が事故の影響で十分ほど遅れております。お急ぎのお客様には大変申し訳ありませんが、ご理解戴けますようよろしくお願いいたします。繰り返し、お客様にお知らせいたします』
晃輝と彼女は思わず顔を見合わせた。
「事故だって。何があったんだろうね?」
「さ、さあ」
十分遅れるのか、と晃輝は再び腕時計に目を落とした。
遅刻はしないだろうが、急がないといけなさそうだ。
朝から体育なのに、と晃輝は憂鬱な気持ちになる。
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