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「ほら、そんな泣きなや」
そう言った彼の困ったような笑顔が滲んで見えた。
わたしはただただ嗚咽を上げる。「ごめん、ごめんね」そうやって何度も謝りたいのに、このいかれた喉からは泣き声しかでてこない。(ごめんね、ごめんなさい)
「俺なら大丈夫、大丈夫やって」
痛々しい白石くんの笑い顔。泣いているわたしが言うのもどうかと思うけど、ちっとも大丈夫そうには見えない。
ようやく声を絞り出して途切れ途切れに「ごめ、んね」と言えた時、白石くんの顔はやっぱり痛々しい笑顔を浮かべていた。
「俺なんかほっといて、幸せになり?」
ぽんぽんと頭を撫でる温かいぬくもり。それが愛おしくてたまらない。わたしは泣きじゃくりながら優しすぎる彼の笑顔が壊れてしまわないことを祈った。
(ごめんね、ごめんなさい)
(優しすぎるきみ)
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