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勝也が、テーブルから奪い取るみたいに卒業アルバムを取り上げると、顔を埋め込むみたいに昔の私を見てる。
よく見たら、面影がある筈。
「本当、なのか?」
「うん、今まで黙っていてごめんね……」
重苦しい沈黙が、私を押し潰しそうになる。
それでも勝也が頭の中で整理して、理解してくれるって淡い期待がどこかにあった。
勝也なら、分かってくれる。
でも、この後に聞こえて来たのは絶望の言葉だった。
「俺を騙してたのか?」
「騙すだなんて……」
「だって、そうだろ。男だったのに、それを隠して女のふりをしてて、気付かない俺を陰で笑っていたんだろ?」
「そんな事、してないよ」
「だったら、何で付き合う前に言わなかったんだよ」
そんな事、言える筈が無かった。
だけど、私が男じゃ無いって事を分かってもらわないと、話しが聞いてもらえない気がして、性同一性障害を説明した。
勝也は私に背を向けたままだけど、一応は話しを聞いてくれているみたい。
後は性同一性障害の事を、どれだけ理解してくれるのかが心配だった。
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