第一章 大失恋のその後で

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   次の日、バイトに行った。  それで私の考えが浅はかだったと、すぐに気付かされる。  事務所に入って挨拶をしても、誰も返事してくれない。それどころか、色々な感情を含めた視線を投げ掛けてくる。  軽蔑、好奇心、侮辱、興味本意、憐れみ、お情け。  そんな目だった。  そして小学校に上がる前、あの時の父親の目もこの中のどれかにあったような気がする。  私が元性同一性障害だったって事を、みんな知ってるって顔に見える。  それは、勝也が喋った為だとすぐ分かった。 「勝也……」  トイレから出てきた勝也は、私を他人でも見るみたいにどころか、汚いものでも見るみたいな目で一瞬だけ見て仕事に行ってしまう。  勝也は、性同一性障害だなんて言わなかったかもしれない。もっと酷い事を、みんなに言いふらしたんだ。  その直後、店長に呼ばれた。 「あの、店長……」  私の事を呼んでおいて、店長は何も言わなかった。まるで、私が何かを言い出すのを待ってるみたいに見える。  それに、変な威圧感も発してる。  
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