プロローグ

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   川面を眺めてみる。  揺らぐ水面には、泣き顔の私がいた。そう言えば、いつも私は泣いてた気がする。  子供の頃から、何かあるたび泣いていた。  最初にそうして泣いたのは、いつの時だっただろうか。  一人っ子だった私は両親が共働きだったせいで、家に一人でいることが多かった。寂しくて泣いてたし、お母さんに怒られても泣いていた。  でも泣いてたのは、ずっと前からだった気がする。  もしかしたら、あの時かもしれない…… 「お母さん、ランドセルの色が違うよ」 「えっ……」 「あたしのランドセルは、赤でしょ?」  その後、父親に顔を力強く叩かれた。  それまで自分の事を、「ぼく」とか「あたし」とかって言った事が無かったから、余計に両親はびっくりしたかもしれないけど、初めて何かがおかしいって認識したのがこの時。  そして、泣いたんだ。 「お前は男なんだ、ランドセルの色は黒に決まっているだろう」  父親は、そう言ってまた殴ってきた。  あたしは、男の子なの?  その言葉が、あの日まで私の心に突き刺さって苦しくて辛かった。  だから、泣き続けたんだと思う。  
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