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レンタルビデオ店の中で、身動きが出来なくなりそうになった。
DVDを借りる事自体は大したことではないのに、それをさせない理由が身体を固める。
惰性的に付き合っていたって、キス以上の関係が無くたって勝也がこんなにも私の中にいる。
それだけ、大きな存在だったんだ。
それだけ、勝也が好きだったんだ。
「勝也が、いなくなっちゃったよ……」
溢れ出しそうな涙を必死に堪えて、無意識に恋愛コーナーの古めのDVD5枚を手に取って、それを借りると真っ直ぐに部屋に帰った。
涙で滲んで、鍵を開けるのに何分かの時間がかかってしまう。
「ただいま……」
普段はそんな事なんて言わないのに、自然に「ただいま」と言っていた。
10時間くらい前、勝也そこにいたんだ。
ソファーの前のテーブルには、まだ卒業アルバムが開いたままで置いてある。
まるで、そこだけ時間が止まったみたいに見えた。
「勝也……」
そう呟いてみたら涙が溢れ全身の力が抜けて、その場で座り込んで動けなくなってた。
そして、大声を上げて泣いた。
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