第一章 大失恋のその後で

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   もう出ないと思った涙は、お母さんのメールで引き出された。  涙って、限界は無いのかもしれないな。 “愛美、最近連絡が無いけど無事に生活出来てるの? 家賃と光熱費以外にも、仕送りが必要なら言いなさい。それと、たまには遊びに来なさいね。” 「お母さん……」  3日前の事なんて、全く関係無いメール。  あの事を知らないから当たり前だけど、世界中で私の味方はお母さんしかいないって気がする。  一時期、本当にそうだった。  性同一性障害って言葉を知った頃、本当にお母さんだけが私の味方で、もしお母さんがいなかったら、その事から逃げ出していたかもしれない。 「お母さん、まだ何とか大丈夫だよ」  そう言いながら、そのままの言葉をメールで送る。  お母さんは、1年前に再婚をした。  色々あって一人で私を育ててくれて、性同一性障害を受け入れてくれて、性別適合手術の後押しをしてくれた。  私が戻ってきた時、お母さんの隣には私にとって義父になる人がいて、その人もバツイチで会社経営をしてる。 「愛美。お母さん、あの……」 「いいよ。私は、これから一人でやってく。それなら、お母さん幸せになれるんでしょ?」  
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