第一章 大失恋のその後で

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   義父は、私の性同一性障害や性別適合手術の事を知っても、一緒に暮らそうって言ってくれていた人。  どんなに理解があっても、他人ならいつかは気持ちにほころびが出来る。別々に暮らすなら、最低限お母さんだけは幸せになれるって思った。  だから、二人の入籍と同時に私は独立した。  独立したって言っても、今の部屋の家賃と光熱費だけは義父が全て払ってくれている。  それでもカラオケボックスのバイト代では、生活するにはギリギリだった。 「生活費、どうしよう……」  辞める前までの給料が入ったら、収入は無くなってしまう。でも、義父には甘えたく無かった。  取り敢えず着信拒否の操作をして、ソファーに身体を投げ出してみた。  私の周りの空気が掻き回されて、小さな風が起きていた。 「何か、臭い……」  そこで気付く。  3日間、お風呂はおろかシャワーすら浴びてない。更にとどめとばかりに、化粧すら落としていない事を思い出す。  鏡を見ると、酷い顔してる私がいた。  
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