第一章 大失恋のその後で

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   その時、画面にエンドロールが流れ始め、その映画の終わりを告げている。 「終わっちゃった。入れ替えなきゃ……」  同じDVDを続けて再生してもいいはずなのに、何でだか律儀に毎回入れ替えてる。  それが唯一、私の生きているって確認する為の作業に思えたから。  リモコンを操作して、DVDを取り出す。 『まなみ……』 「えっ?」  リモコンを押し間違えて画面がテレビに切り替わり、昼ドラの俳優が相手役の女優をそう呼んだ。  女優の役名が、私と同じなんだ。 『愛美、こっちに来いよ』  彼氏が、もう元カレなんだっけ。私を呼ぶ時と同じ呼び方で、俳優が女優を呼んでいる。  その瞬間、記憶が逆戻りするみたいに色々な事を思い出す。            「吉田さん、話しって何ですか?」 「俺の事を、吉田さんじゃなくて勝也って呼んでくれないか」 「えっ、それって……」 「俺と付き合ってほしい」  カラオケボックスのバイト先で、私の教育係だった吉田さんに店の裏に呼び出されて告白された。    
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