第一章 大失恋のその後で

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   それは、バンドの練習やライブに一度も呼ばれなかったから。  普通バンドしてたら、彼女には一番見せたいんじゃないかって思いそうだけど、勝也は絶対ってくらいに見せたがらなかった。 「ねぇ、練習見に行きたいよ」 「その内な。メンバーが変わったばっかで、見せられる状態じゃないんだ。前にも言ったろ」 「そうだけど……」  私に取って勝也のバンド活動は、唯一知らないシークレットな部分。  もしかして、バンドなんてしてないんじゃないの?  そんな事を考えたりもした。  それは浮気とか二股とか、そんな悪い考えにも行き着くんだけど、それ以上に重大な秘密を私が隠してるから、追求なんて出来なかった。  だから、信じるしか無いって自分に言い聞かせてた。  そして、何日か前。 「愛美、今日はメシ食って帰るか?」 「うん、久しぶりにラーメン食べたいな」 「じゃあ、新しく出来た駅前の店に行ってみるか」  久しぶりに、デートが出来るってだけで嬉しかった。  それは、勝也も同じだったみたい。    
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