星空

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確かに持って帰ったはずなのに、彼女からの連絡はなかった。 深いため息のなか、今日もバイトに向かう。ディスカウントショップのバイトを選んだ理由はただひとつ、男の美学である筋トレのためだ。 だが意外と力仕事が少なく、最近はバイトがダルくて仕方がなかった。 彼女の存在に気付くあの日までは。 昨日は彼女からの連絡がないか気になってあまり寝れなかった。トイレで顔を洗って気合いを入れなおした俺の目に飛込んできたのは、廊下をペンギンみたいに歩く彼女だった。そこからはよく覚えてない、ただ、俺が今持っている勇気とやらを、MAXに使って彼女に声をかけたんだ。 「あのーそこのお嬢さん、レシートは?」 「はい?」 「昨日レシート持って帰りおったやろ?何で連絡せん?」 …………返事がない。 ただあの茶色い瞳で俺をじっと見ている。 さっき顔を洗ったから水滴でもついてるのか?それともゴミでもついてるのか?彼女は俺を真っ直ぐ見たままだ。「…俺、顔に何か付いとるんか?」 そして二人は同時に笑ったんだ。
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