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あたしの名は浅宮桜花あさみやおうか。
肩の下までの長さの髪をポニーテールに結んでいる。
別にとびきりの美人って顔じゃないし、勉強が出来るってわけじゃない。ましてやスポーツが得意というわけじゃないんだ。至って普通だ。
あたしが通っているのは、私立葉山学園の高等科で、ここの2年でクラスはC組。
そして進級してから一ヶ月が経ったある日。
「桜花ちゃん、悪いんだけど英和の辞書かして。」
窓際の席に座り、外を見ていたあたしに、必死に両手を顔の前で合わせて頼むのはショートヘアーの髪型の辻村里奈つじむらりな。
忘れ物のちょっと多いあたしの親友だ。
「たくっ…里奈は忘れ物が多すぎだよ…」
呆れ気味に桜花は里奈に言った。
「ごめーん、今度からは気を付けるから…ねぇお願い今日だけ…」
苦笑いをしながら里奈は桜花に頼む。
「たくっ…いいよ。」
少し目を細め、呆れ顔をすると、桜花は俯いて言った。
「ホントに貸してくれるの!!」
嬉しそうに里奈は桜花に言う。
「うん、但し帰りにパフェ里奈のおごりだからね。」
桜花は辞書を渡すと、強気に里奈を見上げて言った。
「ありがとう!桜花ちゃんは優しい私の神様、女神様!」
がばっ
里奈は大喜びでそう言うと桜花に抱きつくそんな里奈を、桜花はやれやれと言った表情をしている。
里奈はあたしと違って、勉強が得意だからいつも学年の順位は5番以内、素直な性格でおまけに大きくてぱっちりな瞳で男子にモテる。
そんな里奈を、ちょっぴりだけど羨ましいと思うのも事実…あたしが男だったらマジで惚れるタイプの可愛女の子だ。
だから愛くるしい笑顔を、見せる里奈に頼まれたら、誰だってイヤとは言えない、あたしだってもちろんそう思ってしまう…
ザワザワ
ガヤガヤ
「剣翔君、昨日のスペシャルドラマたった一つの願い見た!?」
「うん、見たよ。感動する話しで思わず涙が出てきたよ。」
「うんうん、私もお姉ちゃんと見てたんだけど…2人で涙流しての。」
話し声が聞こえ、桜花と里奈は女子生徒達に囲まれている方を見る。
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