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あたしが篠崎君と初めて会ったのは4歳の時、幼等部の入園式で母に無理矢理手を引かれ連れていかれた。
でも…どうしても嫌で、あたしは母の手を振り切り駆け出したんだ。
目を瞑り夢中で走って、母から100メートルくらい離れた所で、小石に詰まづき転んでしまいあたしは泣き出した。
あたしが転ぶ様を目の当たりして、泣き叫ぶのを聞いた母は慌てて駆け寄り、泣き止むように慰めるけど泣き止まなかったんだ。
嫌なのに連れて来られたうえ、オマケに転んで、両膝を擦り剥いて、怪我したあたしは痛くて、大きな声でわんわん泣いた。
そんな時、泣いていたあたしに近づいて来た同い年くらいの男の子がいたんだ。
その子は泣きじゃくるあたしに大丈夫?って声をかけると、自分のポケットからハンカチを取出し、そっと涙を拭ってくれた。
あたしはびっくりして泣き止み、キョトンとした顔をしながら、その男の子を見ていたんだ。
あたしが泣き止むと、その子は笑顔で優しく微笑んで、立ち上がるのにそっと手を貸してくれた。
そしてその子は、またねって笑顔であたしに手を振って自分のお母さんの所に走って戻って行ったんだ。
名前も聞かずお礼も言えなかった…
それが篠崎君との出会い…
…実をいうとあれから13年あまり経ったけど…未だに面と向かって篠崎君にお礼を言えていない…
あたしの母は、元レディースの総長をやっていたために、口が悪く、意地っ張りな性格で、その性格をまんま受け継いだあたし…だから素直にお礼を言うことが出来ないんだ。
だから学校ではボロ(汚い言葉)が出ないように丁寧に話すように努力している。
しかも、令嬢や御曹司が多いこの学園では、殆どが丁寧な言葉使いだから、あたしにとっては窮屈…たまにミスって暴言を発してしまうこともしばしば…
そんな時は走ってその場を逃れるんだ…
…こんなあたしだけど…やっぱり篠崎君にお礼は言うべきだと思っている…でも中々近付けない…
篠崎君の家は代々続く有名な代議士で、しかもお祖父さんは閣僚…お父さんは派閥の代表なんだ…だから篠崎君の周辺にはSPがいることが多い。
他にも近付けない理由がある。
篠崎君は1人でいることはあまり無く、数人の女子生徒が周りにいるからだ。
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