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 勇者の言を聞き魔女は思う。  それならば、  そうであるならば、  存在意義が消失したのならば、  辞めればよい、と。  勇者を辞めればよい、と。  もう役目は終わったんだから無理することなく辞めればよい、と。  しかし、魔女はそのことを言わない。   言えないのだ。  傍若無人、他人のことを気にしない冷血な心を持っていた、そんな魔女にだって勇者の気持ちを推し量るくらいの分別はある。  彼、勇者は、勇者自身は、勇者であるからこそ、ここまでこれたのだ。  そして、勇者であるからこそ彼でいられたのだ。
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