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 夜は更けていく。  空の黒さは深まり、瞬く星々とのコントラストが一層際立っている。  横に目を向けると、魔女が寝息を立てている。彼女も今日の目まぐるいしい流れに疲れてしまったのだろう。    勇者は夜空を見上げて星を眺めながら、これまでの勇者としての日々を思い出す。  回想する。  初めて違う町を訪れた時のこと。  初めてまともな宿に泊まった時のこと。  初めておいしい料理を食べた時のこと。  初めて他人に感謝された時のこと。  初めて仲間ができた時のこと。  初めて人間らしくいられた時のこと。
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