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 敵を殺するのは怖くなかった。モンスターと相対することは怖くなかった。  そんなものは貧民街にいれば日常だったし、得られた幸福に比べれば些細なものだった。  ただ少し悲しかったのは、以前の自分と同じ境遇のものが予想以上に多かったことだ。  多くの浮浪者を多くの街で見かけた。  王様による圧政が続いている影響だと聞く。  しかし、苦しんでいる彼らを救うためにも、剣を振るい続け、魔法を唱え続けた。  人に助けを求められるようになった。  人を助けるようになった。  人に頼みごとをされるようになった。  人の頼みを聞き入れるようになった。  人から尊敬されるようになった。   人から崇められるようになった。  少し恥ずかしくて、とても嬉しかった。
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