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 勇者はふと、こちらに視線をよこしている者がいるのに気がついた。  もうひとりのお供――戦士である。  戦士。  精悍な顔つきと鍛え抜かれた身体。  腰にあてたる剣は僅かな月明かりの中でも美しく光る。    戦士は、勇者がこちらに気づいたのを皮切りに話し始めた。 「すいません。お邪魔でしたか、勇者様。せっかく美しい夜空に向い、物思いに耽ていますところに」  いや、構わないよと勇者は返す。 「有難う御座います勇者様。それにしても、一介の兵士である自分が魔王を倒すことが出来たなんて、未だに信じられないことです」 「一介の兵士だなんて謙遜するな。謙り過ぎて逆に悲しくなる。お前はずっと前から今の今まで立派な戦士だ」  戦士は勇者のお供として王国の城から派遣された兵士、いや、正確に述べれば、彼は城から左遷された兵士だった。
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