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その魔女は勇者の視線に気づき、そして微笑。
魔女特有の鋭い目を勇者に投げかけ――芝居がかった口調で語りかける。
「勇者様。ねえ、勇者様。あなたの仕事は、すべて、すべて、終わりましたわね、勇者様」
思い返すように魔女は呟く。
「私は、かの賢者の石――究極にて究局の果てにある石であり、永遠の生を与え卑金属を金に変える石。
それを魔王の城から無事に手に入れることが出来ましたからね。
今あらためてお礼を申し上げますわ」
魔女は続ける。
「思えば、三年。長いものでしたわ。
あなたの仕事は魔王の城までの私の護衛。
私の仕事は魔王を殺すまでのあなたのサポート。
お互い持ちつ持たれつよくやってきましたものです」
一瞬魔女の目に悲しみが宿り――でも、それもすぐに消えて覚悟を決した瞳を輝かせて、
「――けれど、もうそれも、もうおしまい。私はこれから賢者の石を調べなくちゃなりませんもの。
王国から褒賞を貰ったら、それを資金源にさっさと山に篭って研究に没頭するつもりですわ、勇者様」
そういい終えると、魔女は勇者に軽くウインクをする。
いつもと変わりない。
普段通りの魔女であった。
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