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なんだこりゃ。
日常とは程遠い展開になってきた現状を、カムイは改めて確認した。
見渡す限りの樹海の中でありながら、周囲の草木を埋め尽くすほどに多いゴロツキ集団。
その集団が取り囲んでいる大樹にもたれかかっている、疲れ切った様子の甲冑の騎士。
ゴロツキの中には、ただの不良に哀れな浮浪者、露骨な山賊もいれば、比較的身なりの良い剣士までいる。まさかとは思うが、連中全員が騎士を狙っているのだろうか。
どうやら右腕を負傷しているらしい騎士は、この絶望的状況にありながら、まだ抵抗する素振りを見せていた。視線を巡らせ、脱出策を練っている。
その様子が滑稽に映ったのか、ゴロツキの大半が下卑た嘲笑を浴びせた。全方位から聞こえてくる声の嵐が、僅かな希望すら粉々にしていく。
どうなってんだこりゃ。
カムイは未だ把握できない現状に心底困っていた。
その時、騎士が音もなく剣を抜いた。一度も使われた事がないかのように、白く光り輝く切っ先は、まっすぐにゴロツキの1人に向けられている。
少し意表を突かれたらしいゴロツキは、嘲笑を引っ込めて騎士を睨みつけた。周囲からは品性の欠片も見当たらないヤジが矢継ぎ早に飛び出していく。
だが、既に活路を開くべく覚悟を決めた騎士に、そんな言葉は届かなかった。
騎士は剣を左手1本で水平に構えると、燕のように飛び出し――――――――真上からの乱入者に組み伏せられた。
……さて、どうすっかな。
樹上から飛び降りると同時に騎士を組み伏せ、カムイは深々と嘆息をもらした。
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