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カムイの持っていたそれは、ちんけな木の枝だった。赤子の手でも折れそうな、ひ弱で細い無力な棒きれ。しかし、あまりに堂々としたカムイの態度で、まるで魔法の杖のように、持ち得ない威厳を振りまいていた。
すると、カムイが何かをつぶやいた。まるで呪いをかけるかのように、ブツブツと感情を込めずに言い続ける。
突然つむぎ出された謎の言葉に、全員何かを恐れるように口をつぐむ。そうして生まれた静寂は、更に彼らの恐怖をあおった。
だが、いつまで経ってもいっこうに変化は起こらなかった。誰かが倒れるわけでもなく、誰かが消えるわけでもない。
その場にいる誰もが辺りを見回し、異常が無い事を確かめる。
誰もが平静を取り戻し、ただの時間稼ぎだろうと納得しようとした、まさにその時。
「わあぁっ!」
カムイの上に乗っていた女騎士が突然空中に飛び上がった。
あわてた女騎士は渾身の力で、目の前を通り過ぎていく大樹の幹に剣を突き立てた。強い負荷がかかり、左手がきしむ。それでも必死に力を込め、なんとか上昇を阻止した。
だが女騎士の体は、まるで天地が逆さになったかのように、剣に支えられた逆立ち状態のままだった。
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