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[恋はするものじゃなくて落ちるものなんだ]
雨が東京タワーを霞ませていた。
雨が服を濡らしている。
風がものすごく強くて傘なんて役に立たなくて、暑さと湿気で嫌にながらいつものバーに入る。
中に入るとカウンターに彼女は座っていた。
「ごめんなさい、待ちました?」
「いいえ、大丈夫よ、歩(あゆむ)。すごい雨ね。」
僕より20才以上離れている彼女は、史花(ふみか)さん。
史花さんは、もう2年前から恋人。
史花さんには、家庭がある。
だから、僕達は密に会っていた。
いわゆる、不倫だ。
「どう?大学は?。」
史花さんは、こっちを見て微笑んだ。
「うん・・・まあまあです。」
「そうなの・・・ねえ、もっと話して?。」
史花さんは、お酒の中の氷を指でいじりながら僕に言う。
「大学は・・・綺麗ですよ・・階段がアンティークみたいな感じで・・・それで・・。」
「それで?。」
史花さんと目が会うと僕は反射的に目をそらした。
「講堂がすごい綺麗で・・・いつか史花さんと歩きたいです。」
「そうなの?私も貴方と見てみたいわ。」
「え・・・?。」
目を丸くした僕を史花さんは笑った。
「貴方のそんな顔が私は好きだわ。」
僕の頬を史花さんはそっと撫でてその手を僕の前髪へと移動して優しく僕の耳に髪をかける。
「ねえ、今晩、夫がいないの・・良かったら家にこない?」
「はいっ!行きたいです。」
「じゃぁ、決まりね。」
僕達は会計を済ませ外に出た。
史花さんの夫は海外への出張が多く家にいないときが多い。
僕は、その機会を使って史花さんの家に行くことが多かった。
タクシーを慣れた手つきで電話でチャーターした史花さんは、僕とタクシーに乗り込んだ。
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