大人な恋

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僕は、その寝顔をずっと朝まで眺める。 外が明るくなってでも雨は、相変わらず降り続いたままだった。 もぞっと史花さんが動く。 「おはようございます、史花さん。」 ぎょっと抱きしめた。 「おはよう。歩。シャワーを浴びてくるわ。」 「はい。」 そういって僕の腕からするすると体が抜けていって史花さんは服を着て出っていった。 史花さんがいなくなった部屋でぼーっと天井を眺める。 ぼーとしていたら史花さんが裸で入ってきた。 「シャワー空いたわよ。」 「ありがとうございます。」 「服は昨日のが乾いてるから。」 史花さんは僕が寝ている横に座る。 かすかに梨の香りがした。 僕は、服を着ないまま史花さんを抱きしめ後ろからキスをする。 「もうだめよ。」 「帰りたくないです。」 「だめよ。」 呆れたように僕の頬を両手で包んだ。 「・・・ごめんなさい。」 その場を離れてシャワーを浴びる。 シャワーを浴び終えると史花さんはもう支度を終えていた。 僕は、手早く服を身に着け支度を終える。 「駅まで送るわ。タクシーが捕まらなかったから。歩きでいい?。」 二人で靴を履く。 「傘持ちます。 ドアを開けると熱気が一気に入ってくる。 駅への道で僕らは手をしっかりとつなぐ。 「もう駅近いから離して。」 そういって手を放す。こういうのはもう慣れた。 駅の改札で史花さんは、立ち止まった。 「昨日はありがとう。楽しかったわ。」 僕の手から傘を取る。 「はい。」 「じゃあね、大学楽しんで歩。」 そう言って他人のような顔をして去って行った。 雨が史花さんの背中を霞ませていく。 僕が史花さんに恋をしたのもきっと理屈とかじゃない もっと甘やかで逆らえない感じ。 恋はするものじゃなくて落ちるものなんだ。 僕は、踵を返して雑踏の中へと足を踏み出した。 fin
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