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「あぁ、確かに私は蘭華だ」
やがて蘭華は語り掛けるような口ぶりで質問に答えた。
その時、蘭華は見た。
――幽香の瞳が揺らいだのを。
「やっぱり蘭華なのね。一年も顔見せないで」
涙を隠す為か幽香は両手を蘭華の肩に置き、顔を胸に埋める。
これが感動の再会というやつなのだろうか。
幽香は肩を揺らし泣いた。……だが、蘭華は泣けなかった。
「その……なんだ。幽香は私を知ってるのか?」
途端、幽香は埋めていた顔をあげ信じられないといった面持ちで蘭華に問いただした。
「もしかして……記憶が……ない…の?」
蘭華は答える。そうだと。
再び幽香は顔を地面に向けた。
目から溢れた雫が地面を微かに潤す。
幽香は再び泣いた。今度は嬉しさからではない悲しさから。
「そう……なら、この先にある神社に行きなさい」
再び溢れた涙を拭い、幽香は蘭華に背を向けた。
暫くの沈黙。幽香は言った、もう一度力強く、相手を拒絶するように。
「行きなさい」
一瞬間があき、蘭華は幽香に背を向け歩きだした。
「……待って。あげるわ」
なんだ?。振り返った蘭華に何かが投げらた。
蘭華はそれを軽くキャッチし、投げられたソレを眺める。
蘭華の手に握られていたのは一輪の太陽の花『向日葵』。花言葉は、
「『貴女だけを見ている』。か、ありがとう幽香」
「いいのよ。暇になったらまた来なさい」
必ず。そう約束を交わし、蘭華は再び歩きだした。
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