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見る人も釣られて笑ってしまう。……そんな子供のような笑みを見せた淦は失礼しますよと隣に腰掛ける。
そして、一瞬の間を置きさらっと言った。
「神社に行くのは控えてもらいたいのですが……」
そこで私は初めて淦をちゃんと見た気がする。
金色に輝く髪を肩まで伸ばし、五角形の帽子を被っている。
背中には鴉を思わせる漆黒の翼、そしてはっきりと見据える黒い瞳を私に向けていた。
私は淦を見つめ静かに問う、何故だと。
淦は黒い瞳を細めそれに答えた。
「博霊神社には賢者側の駒である“八女 刹姫・ヤメ サツキ”がいます。
これから先の事を考えると会わない方がいいですよ」
「八女 刹姫?……記憶にあるな。顔をわからないが。……かれこれ気になっていた。
貴様らは何がしたい?。神側の駒、賢者側の駒、そろそろ教えてくれてもいいんじゃないか?」
私の質問を聞いていたのか、何も答えず淦は立ち上がる。
「知りたいなら来て下さい」
服に付いた汚れを掃い、それだけ言った淦の背中を見据え私も立ち上がる。
――脚の腫れはひいていた。
断る理由などない。私は黙って淦の背中を追いかけた。
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