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俺は夏が嫌いだ。
虫はうるせぇし、蒸し暑いし。……良いことなんてないだろ。
他の季節、例えば冬とかならまだ耐えられる学校もこの季節になると話は別だ。
妙に苛々するんだ。
兎に角、学校を終えた俺は滲み出る疲れと汗を払う為、家に帰ると同時にベッドに沈んだ。
「お~す、入るぜ」
それから数時間して聴こえたのはむさ苦しい声だった。
……空気を読めよ、あの馬鹿。
顔を上げるのも面倒くさかった俺は音だけであいつの行動を観察することにした。
「あれ?……“愁音・シュウネ”居ないのか?」
……居ないわけないだろ。靴が有るのに気づけ。
馬鹿なあいつはまず玄関に入ってきて、1m無い廊下を渡ってくる。
そして、一秒足らずでたどり着くのが俺のいる六畳ほどの部屋だ。
俺が住むこのボロアパートの造りはそんなもんだ。
玄関から直結して現れるこの部屋以外部屋らしい物は無い。
だが、風呂とトイレ付きだから借りたわけだが、今は後悔してる。
「よぅ愁音。遊びに来たぜ」
「来んな馬鹿。この季節、お前に会うのが一番の苦痛だ」
そ、そんなぁ。馬鹿の弱々しい声と共に床に何かが落ちたような音がした。
……あぁ、こいつ膝から崩れ落ちたな。
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