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◇◇◇
小さな目的で集まった五人はそれぞれの道を歩いていた。
“桐上 紅乃・キリジョウ クナイ”彼女もまたその内の一人……いや、彼女の場合は少し違った。
紅乃は一人暗い森の中で立ち尽くしていた。
何かあるわけではない
紅乃の目の前には何の変化も起こさない黒があるだけ
「なにやってるの?」
やがてそんな不可解な行動をしていた紅乃に声が掛けられる。
振り返った先にいた怪奇の目を向ける婪崋を紅乃は一瞥するとまた視線を元に戻し言った。
「ここ……念が強い」
可愛いらしい顔付きからは想像出来ない無機質な機械を思わせる声だった。
婪崋は紅乃の傍に立つと紅乃の見る地面に見据え
頭を軽く捻った後、口元を吊り上げた。
「何かあるの?」
笑う婪崋は此処に何があるか知っているのだろう
だが、あえて紅乃に聞いた
「ここ……念が強い……人…屈辱の念」
紅乃が笑う。
それは機械が無理に作ったように引き攣った笑みだった。
「使える…仕える……新しい……思念」
「よかったわね」
うん、と頷き紅乃は腰を屈め地面とくちづけを交わした。
それを婪崋は笑顔で眺めていた。
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