紅神楽・一幕

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幻想郷に日が昇った。 漆黒に包まれていた世界は一変し、全ての地を太陽が照らし出す。 森も川も山も微かな集落も例外などない。 「紅神楽……か」 丘に佇む日の光りを一身に浴びている蘭華は腰まで伸びた朱い髪に手を当て眼下の人里を見据える。 「くだらないゲームだ」 気怠そうに垂れた朱い瞳が一瞬だけ揺らめいた。 蘭華は足元に置かれた白い包みを持ち歩きだす 目的地は……人里 それから数十分後、蘭華は立ち止まった。 目の前には毅然とそびえ立つ大きな門 だが、蘭華の瞳はまるで興味ないとばからに門を捉えていない 虚空の瞳が興味を示したのは門のふもとにいる二人の人物 「君は誰だ?」 蘭華に気付いた二人の内の一人が蘭華に近づき 前髪に隠れたその顔を覗き込む 「君は……もしかして蘭華か?!」 一人の女性は嬉しそうに蘭華に笑顔を向ける だが、蘭華はこの女性を知らない。もしかしたら知っているかも知れない だが、たとえ知っているとしても記憶障害を起こしている蘭華には誰だが判別が出来ない。 ――あぁ私は知人を殺さなければいけないのか 「すまない」 女性の胸に刺さる銀色のナイフ。 ――不思議と迷いはなかった 「慧音ッ!!」 白銀の髪を乱しもう一人の少女が崩れさる女性の名を叫んだ。 悲しき事だそれをきっかけに蘭華の再認が働いた。
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