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本当に迷惑な奴だな。
勝手に来て勝手に落胆して。……面倒くさい。
「じゃあ俺帰るよ。……アイス買ってきたけど」
……でも、遊びに来たわけだし、部屋の主としてもてなしてやらないと、な。
「……し、仕方ねぇなぁ。話し相手になってやるよ」
『アイス』。顔を上げ、俺の視界が捉えたあいつのむさ苦しい手にソレが握られていた。
この暑さを吹き飛ばしてくれる救世主であり俺の好物。
今はビニール袋の中に隠れてはいるが、きっとその姿は苺味に違いない。いや、それ以外は認めない。
ソレの誘惑に俺の体は素直に誘われ、無意識の内に自分の腕をあの馬鹿に伸ばしていた。……そういえばこいつ、本当に座り込んでやがったな。
「現金な奴」
「うるせぇ。俺は自分に素直なんだよ」
「……アイス大好き人間」
「帰るか?」
相手して早々煩い奴だ。
俺は自分のいる場所に座り直したそいつからビニール袋を受け取り、中に手を入れる。
突っ込んだ手が確かな感触を捉えた、俺はソレを掴み出した。……わけだが。
「……なんだこれ」
そう、俺の手に掴まれていたのはピンクのソレではなかった。
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