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◇
「――風見 蘭華様」
私の意識を戻したのは、愁音の声ではない、丁重過ぎる誰か声だった。
辺りを見渡してみる。
そして、視界に映り込んできたのは数多の目。
下から上に消えていく気味の悪い目達。
だが、何故だろうか。私はこの光景を懐かしんでいるようであった。
それよりも、此処はどのなのだろうか。私は一体どうしたと言うのだろうか。
そうだ。
――墜ちたんだ。
だが、何故?私は墜ちている。
数分前まで私は愁音と神社に居たはずだ。
……こんな状況だというのに、私の心は自分でも驚くほど冷静だった。
「風見 蘭華様」
もう一度あの声が聴覚ではない頭に直接響いてきた。
「……なんだ?」
「ふふふ、貴女はあの方とは違いますね。随分と大人しい。
ところで、普通ではここで説明をするのですが、貴女には不要ですよね」
さっきからこの声は何を言っているんだ?
突然現れて説明を省く。……何がしたい?
「まぁ、あっちの世界の事は大体記憶に残されているはずです」
消えていたらすいません。謝る声。
姿が見えていたらきっと頭を下げているだろう。
「これから話す事は再認の補助として記憶しておいて下さい。
貴女は“神側の駒”です。
神側の駒は五人。“賢者側の駒”も五人。……彼らには向こうで会えるでしょう。
貴女の担当は“人里”です。
準備期間は三日。詳しくはまた会った時にでも。
……そうそう風見 蘭華様、“幻想郷にようこそ”」
それを最後に私の意識がまた無に帰った。
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