プロローグ - 或哲學徒の悩み

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理学部物理学科といっても、一流大学でなければ、単に高校で理科系だった学生の集まりに過ぎない。 「純粋哲学上の悩み」からこの学科を志望してきた哲学氏には、それが耐えられなかった。「哲学氏」というのは、上記のような志望理由の彼に対してつけられたあだ名である。 哲学氏は高校時代のほとんどを文科系学生として過ごし、受験の直前になって理学部を志望したのだ。それまで文学部哲学科志望だった彼が180度方向転換をしたように見えた者たちは一様に驚いたが、彼はその「純粋哲学上の悩み」をそういった表面ばかりしか見えない者たちに語ることはなかった。 さてこの中途半端な理学部物理学科に不満を抱いていた哲学氏であったが、様々な紆余曲折を経て、3人の戦友を得た。 1人とは「詭弁論サークル」主催の弁論大会で激しく議論を交わした末に意気投合し、別の1人とは文学部のギリシア語の授業にもぐっている者同士親しくなった。そして最後の1人とは生協の哲学書コーナーで同時に同じ本に手を伸ばすという運命的な出会いをした。 そしてこの春、彼らは2年になった。
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