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というよりも、S教授は4人の傍若無人ぶりを把握していないのかもしれない。S教授の専門は原子核物理で、彼はいわゆる実験屋の部類に属する。だからいつもは実験室にいて、研究室に姿を見せることはあまりないのだ。そういうわけで4人は勝手に来ては勝手に勉強し、勝手に議論し、勝手に帰る。 「ところでお前らは、理論系と実験系のどっちに進むんだい?」 「やけに唐突に聞くなあ」 「常に他人の顔の色を窺う、普通氏らしい質問だな」 「失敬だな。なんか今聞かなきゃいけないような気がしたんだよ。哲学氏はどうせ素粒子だろ?」 「どうせ、とはなんだ。たしかに、根源的なるものこそ私の求めているものではあるが・・・」 「僕はS研に配属されたいなあ。ここ居心地いいし」 「どこでも本を読んでるような君に居心地の良し悪しなんてあるんだな。まあ、これだけ迷惑をかけておいてS研にきたら先輩にいじめられると思うがな」 「自覚してないみたいだけど、基本的に迷惑かけてるのは君と哲学氏だけだと思うよ。僕は人畜無害だし、誰からも恨まれないタイプだもん」 「世の中はそんなに優しくないんだよ。僕らと付き合ったのが運のつきだ。君も同類だと見なされるに決まっている」
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