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「なんで俺が こんな仕事なんだよ」
風情溢れる造りの廊下に、どこからともなく聞こえる呟き。
月の綺麗な夜、天井に張り付いた怪しいシルエット。
Shadow Wolf 影狼こと『叱辺 影桐(しつべ かげきり)』はある情報を掴み、とある料亭に来ていた。
叱辺は、誰にも見つからないように料亭に忍び込んみ、ターゲットが来る筈の一室に、小型カメラと拾音装置を仕掛けた。その後叱辺自身は、カメラ片手に天井に張り付いて、ターゲットが来るのを待っていたのである。
ちなみに、叱辺が持っているカメラは暗視装置付きであり、音も全くと言っていい程立たない物である。
そんなこんなで約3分後、少しハゲた男が部屋へとやってくる。この人物は、悪い噂が絶えない組織の支部長である。叱辺は、ハゲ男が部屋に入って行くのを静かに見届けていた。
そしてまた待つこと5分と18秒。今度は眼鏡をかけた、そこそこ大物の政治家がやって来た。この男は最近やたらと週刊誌に載り、今世間で噂のスキャンダル政治家である。
しかしいくら時間をズラしても、カメラマンが料亭の中にいたのでは、全く意味を果たさない。さらに、部屋の中には既に料理が運ばれているので、店の人間が来ることはない。
そこで叱辺は、静かに廊下に降り立ち、障子に影が映らないよう注意しながら障子を少し開け、中の様子を伺う。部屋の中では、至って下らない中年同士の会話がされていた。
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