憧れは氷の女帝

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美咲はどこだ? 俺は辺りを眺め美咲のことを発見した。 彼女は窓側の後ろから二番目の席に座って本を読んでいるようだ。 教室内はざわついているのだが、凛とした表情を浮かべて淡々と本のページを進めている。 どうやら周りは全く気にならないらしいな。 「声かけづらぁ……」 独り言が口から漏れた。 声を掛けづらい理由は2つある。 1つは、美咲が本を読んでいると他のものが見えなくなること(さっき気付いたけど)。 もう1つは、美咲に告白しにきた愚かな少年と見られることだ。 端正な顔立ちでスレンダーな肢体。腰まである黒髪は艶があり清潔感を醸し出していた。 つまり、容姿は素晴らしいの一言に尽きる。 それゆえ、美咲はモテるのだ。 中学校時代は毎日のように告白され、それを全て断り続けたため アイスプリンセス 「氷の姫」というアダ名をつけられたくらいだ。 高校でも同じようなことが起こり、中学校のアダ名がグレードアップして ブリザードエンプレス 「氷の女帝」というものになっているらしい。 後者さえなければ良いのだが、美咲の元へ行かなければならない。 俺は意を決して美咲の机に向かった。 「美咲、来たぞ」 「……」 「おーい、美咲」 「…………」 どうやら聞こえていないらしい。仕方なく本を取り上げると無表情の顔がこちらへと向いた。 「……返して」 「これから用があるって言ったから来たんだぞ」 「……返して」 「……………」 「……………」 にらめっこは俺が根負けして、美咲に本を返した。 美咲は俺から取り返した本を鞄にしまうと、席から立ち上がった。 「来て」 美咲は俺の手を握って教室を出ていこうとした。 「ありえねえ」 「アイツは誰だ」 「俺の嫁に何をしやがる」 「……ファンクラブに報告」 などと、クラスの人達が何か言っているようだが気にしては負けだ。 だけど、最後の方は気にしておこうかな。
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