学校と書き、戦場と読む

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朝のホームルームが終わる頃を見計らって教室に入る。 「ハル、また遅刻かよ」 「今日は仕方なかったんだよ」 声を掛けてきたのはうちのクラスのリーダー的存在の玉田研志である。 名前がけんしってところから「侍」と呼ばれることもある。 そんなアダ名を持っているくせに、陸上部に所属しており、100メートルをやっているらしい。 こいつとは席が隣なので何かと話す機会が多く、俺の知らない情報も数多く持っている。 「ところでハル、今日は号外が出たんだぞ」 研志は新聞の号外を渡してきた。 号外には「氷の女帝にまさかの彼氏!?」と書かれていた。 「……………」 この学校の記事は絶対におかしい。誰かそのことに気がついて欲しい。 号外とは、裏組織「学校の旬な情報を新聞にする会」が重要な情報を出来るだけ早く知ってもらうために作られる新聞のことで、一部の人間にしか渡らない。 裏組織は通常、生徒会の認める「新聞部」で活動しており、情報が入ると号外が出されるのである。 その新聞に俺が載っている。見出しを読んだ感じでは心当たりが多すぎて困る。 あーあ、なんか人生ってつまらないな。 「ハルの身の安全のために言っておく、下山さんにはあまり近づくなよ、なんたってファンクラブの人数が……」 ガラガラっと先生が入ってきた。 「また後でな」 気になって仕方ないじゃないか。 先生帰っていいぞ。 もちろん、そんなささやかなお願いが通るはずもなく授業が始まった。 朝一発目で英語は辛い。 英語を喋るのは魔法を唱えるくらい難しいと思う。 「中山、この英文を訳せ」 しまった。どこをやってるのかさっぱりだ。 慌てて教科書を見る。 「教科書じゃない黒板に書かれた英文だ」 先生の口調がかなり怖い。 とりあえず、英文を見てみた。 I want to kill you. 先生、ファンクラブの人だったんですね。 そのあとなんとか授業をやりこなし、休み時間になった。 「なぁ侍、ファンクラブの人数って何れくらいなんだ?」 「聞いたところだと全校生徒の2割らしいけど、まだ入学したばかりだしな…」 俺の敵は思ったより多いらしい。 その前にファンクラブなんておかしいだろ。
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