1191人が本棚に入れています
本棚に追加
そのあとの授業も、徹底的に俺が狙われたが、華麗にスルーし続けて昼休みになった。
「あ、弁当忘れた」
そんな、まさか……
財布の中を覗く、平等院鳳凰堂が書かれているのが3枚と真ん中に1と書かれたのが2枚、お札無し。
つまり32円しかない。
今日は本当に運がない……
なんかやる気が無くなった。
急にトントンと肩を叩かれ振り返るとお弁当を持った美咲がいた。
「お弁当持ってきた」
それだけ言い残し去っていく。
ありがとうも言えなかったな。
俺は忘れた弁当を持って来てくれた美咲に心の中で感謝していた。
が、他の人たちはその光景を見て、忘れた弁当を受け取ったと解釈しなかったらしい。
「下山さんが中山に弁当だと……バキッ」
「毎日持ってきていた弁当はまさか……メキョ」
などと言っている。
ちなみに最後の音は箸が折れる音と缶ジュースが潰れる音である。
美咲の登場で俺の立場はさらに怪しくなった。
今日の午後は「芸術祭」の実行委員を決めることになっている。
芸術祭とは入学してすぐにあるイベントのことで、文化祭や体育祭とは違って学校内だけで行われる。
学校に早く馴染もうというのが目的であるこの行事は、クラス内で代表を決めて、体育館で発表するものである。
うちのクラスは何をやるのかなと考えていると、先生が入ってきた。
「えー、では芸術祭の実行委員長を決める……までもないな。中山やってくれるな?」
WHY?俺がやらなければならんのだ
「先生、俺やりたくないんですけど」
「五月蝿い。黙って頷け」
なんか扱い酷いんですけど…
まさか、担任さえもファンクラブの一員なのか?
先生の目が血走っている。
普通に怖い。
俺は仕方なく頷いた。
「では、先生は一切手を出さないので皆で協力してやるように。そして、実行委員長になるべく迷惑をかけるようにしろよ」
ダウト。
ファンクラブの人確定。
教師としてありえない発言すぎるだろ。
先生が教室を出ていき、俺は教壇に立ってうちのクラス(1年3組)の芸術祭の企画案提案会議を始めることにした。
最初のコメントを投稿しよう!