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「『世界を』か。何故だ?」
「……何でだか俺にもよくわからないんだ。ただ、俺がやらなきゃって思ったんだ」
「ふむ」
「いや、何でこんな気持ちになったのか、本当にわかんないんだよ」
宋祐は雲斎に念押しをする。
雲斎はしばらく思案すると『まぁいいか』と言い、宋祐を連れて連合軍の拠点に向けて歩き出した。
◇ ◇ ◇
「魏か」
「うん。やっぱり魏には一番借りがあるし」
向かう途中、宋祐は自分が魏に仕える旨を雲斎に伝えた。
雲斎は残念そうにはしたが、宋祐の考えもしっかりと理解してくれたようだった。
宋祐はそれが嬉しかった。
「ということは、これからは敵同士になるかもしれないってわけか」
「……そうかもね。そうならないことを祈りたいけど」
「私も同じだ。宋祐とは戦いたくない」
「俺もだよ」
「まあ何はともあれ、連合軍にいる間は仲間同士なわけだ。仲良くやろう」
雲斎はにこやかに微笑む。
「だね」
それを見た宋祐も雲斎に微笑み返した。
「では、私はここでお別れだ」
宋祐が雲斎の奥を見ると、雪蓮の軍の兵士達が野営をしていた。
およそ二万から二万五千といった、なかなかの大陣営だった。
「うん。じゃあ、また戦場で会おう」
「そうだな。武運を祈る」
「うん、ありがとう。そちらこそ、武運を祈ってるよ」
雲斎は宋祐に明るい笑顔を見せると、小走りに陣営の中へと入っていった。
宋祐は雲斎の姿が見えなくなるまで見続けていた。
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