【前哨】

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天幕の中では、曹操が笑みを浮かべながら椅子に座していた。 曹操に促され、宋祐も席に着く。 宋祐は席に着いてから周りを見渡す。 華琳の両脇には、夏侯惇と夏侯淵姉妹が華琳の警護をしている。 華琳の前には案内してくれた季衣と、元々天幕の中に居たのだろう流琉もいた。 そしてさらに、宋祐は驚くべき人物を目の当たりにした。 あちらもこちらを見て驚いているようだった。 「久しぶりね。柳宋祐」 「あ、あぁ。久しぶり」 宋祐は周りを見ることに意識を傾けていたため、返事をするのに少し詰まる。 それを感じとったのか、曹操は不思議そうな顔をする。 「……そこの二人、あなたの知り合いなのかしら?」 曹操が二人の人物を指差す。 一人は、黒の髪に眼鏡をかけた、いかにも知的なオーラを漂わせた女性だ。 もう一人は、金の長い髪に、頭の上にマスコットを乗せた不思議な少女だ。 そう、その二人は、稟と風であった。 「あ、うん。旅の途中で知り合……」 「旅の途中で、お兄さん――宋祐さんと出会いました」 宋祐の言葉を遮り、風が一歩前に出て発言する。 稟は風のその行動に、少し慌てたような素振りを見せる。 「あら、そうなの」 「はい」 「凄い偶然ね。同時に、それも知り合い同士が我が軍に仕官しようだなんて」 宋祐は風の横顔をチラリと見る。 風は何故だか嬉しそうに含み笑いをしていた。 「まあいいわ。とにかく、あなた達の仕官は受けましょう。部隊も編成してあげるわ。ただし」 「ただし?」 「最初は勝手がよくわからないでしょうから、季衣と流琉を補助につけてあげるわ」 曹操は宋祐と風・稟の顔を見て、ニコリと微笑む。 「期待しているわよ」 「「「はっ!」」」 華琳は宋祐達の返事を聞くと、満足げに天幕から出て行った。 それに夏侯惇と夏侯淵もついていった。 宋祐とのすれ違いざまに、夏侯淵は『期待しているぞ』と励ましてくれた。
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