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「良かったですね、華琳様」
天幕から出ると、夏侯淵――秋蘭がそう言った。
「何が、かしら?」
「ご冗談を。柳宋祐のことに決まっておりますでしょう?」
秋蘭は苦笑いを浮かべ、曹操――華琳を見る。
華琳も秋蘭と同様に軽く笑みを浮かべる。
「そうね。あの二人といい、柳といい、なかなか良い人材が来てくれたわね」
「まことに。柳も、以前と比べるとまるで別人のように見えました」
「そうね。旅をさせたのは、良かったのかもしれないわね」
華琳は、空を見上げる。
雲一つない空は、見ていて清々しくなるほど青かった。
「これからが楽しみね」
華琳の声は、空に吸い込まれていった。
◇ ◇ ◇
一方。
天幕の中には、宋祐と風、稟に季衣、流琉の計五人が残っている。
「それにしても」
宋祐は横にいる風と稟の方向を向く。
風は宋祐と目が合うと、悪戯っぽく笑う。
「久しぶりだね。稟、風」
「はい。お久しぶりです、宋祐さん」
「お久しぶりです。お兄さん」
風はなおも笑ったままだ。
何がそんなに楽しいのだろうか、宋祐にはわからなかった。
「二人とも、曹操に仕えることにしたの?」
「はい。風も私も、意見が一致しまして」
「へぇ。あ、そう言えば、蜀で星と会ったけど?」
「星ちゃんとは、途中で別れたんです。蜀が気に入ったみたいでした」
「なるほど」
「最初は私達も蜀にしようか、と考えていたのですが……風が魏を強く推すものでして」
「へぇ。そんなに魅力的だったの? 魏は」
「はい~。私はここが一番だと思いましてね。あながち外れではなかったようですが」
「ん? どういうこと?」
「ご想像にお任せします」
風はまたもや悪戯っぽく笑う。
宋祐は意味が分からず首を傾げた。
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