【前哨】

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「どなたが隊長になるか、ということです」 「え? 季衣か流琉じゃないの?」 宋祐がキョトンとしながら尋ねると、流琉は『いいえ』と言い首を横に振る。 「私達はあくまでも手助けをするだけですから」 「そうそう。兄ちゃんたちが、あくまでも主なんだからさ」 流琉の意見に、季衣が付け加える。 「華琳様からも、お三方の誰かを隊長に、との命を受けています」 「曹操様からの命令ならば……従うほかありませんね」 稟が眼鏡を指であげ、憂鬱そうにため息をつく。 隣にいる風は“我関せず”といった感じで、ぐうぐうと寝ていた。 「ねえ、折角だから、兄ちゃんが隊長やっちゃいなよ」 「お、俺!?」 「うん」 季衣は満面の笑みを浮かべながら頷く。 宋祐は季衣の突然の提案に狼狽する。 「私も賛成です」 「稟も!?」 「はい。宋祐殿は、意外と兵達からの人気が高いですからね」 「え? ……そうなの?」 「はい。宋祐殿は、兵達の目線に立って物を考えておられましたから」 確かに宋祐は兵達のことを早く理解しようとして、同じ宿舎で同じ飯を食べ、部隊を歩いて回り兵達とよく話し、また兵達が行うのと同様の訓練を受けたりしてもいた。 そんな宋祐の行動を兵達はよく見ていたのであって、その“よく理解しよう”とした行動が結果として良い方向に働いたのであった。 当の本人はそのようなことを知る由も無いが。 「部隊長は、兵達を上手く指揮しなければなりません。それには、勿論知識も必要となりますが、それ以上に必要なのが信頼と理解ですから」 「そうだね。僕だって、自分の事をよく分かってくれない人の指揮なんか、受けたくないもん」 「まあ確かにそれはそうかもしれないけど……」 だが宋祐には、自分の手に部隊数百人の命が握られるかと思うと、躊躇ってしまう気持ちがあった。
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