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この声が枯れるくらいに
君に"好き"と 言えばよかった。
――なぁ、なんで逝っちまったの。
ぼんやりと、彼女の笑顔の写真を見ながら声に出さずに呟いた。なんで、と、疑問ばっか。みっともない。情けない。
自分が本当に バカみたいだ。
……後悔、ばっか。
なんとなく頭を冷やそうと思って、部屋を出て外の庭に面した廊下にでた。しんとした冷たい空気を、月がしずかに照らす。
不意に吹いた風の冷たさに、目を閉じた。
「――響?」
風にのって 聞こえたのは
「……桜夏?」
聞こえるはずのない 声だった。
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