第二章

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その夜、組織のほとんどの人間が現場に向かった。 そんな中俺は、事務所で一人電気も付けずに物思いにふけっていた。 (ガチャ) ドアが開く音がして俺は振り向く。 「なんだ、いたのか。」 そう言って入ってきたのは親父だった。 「今回もうまくいったようだ。」 「そうですか。」 俺はいつも以上に素っ気なく返事をする。 「もう、殺しはしたくないのか?」 初めて俺が仕事を休んだからきっとそんなことを聞いてくるのだろう。 普段だったら会話を交わすことはほとんどない。 「別にそうゆうわけでは…。」 「じゃあ、こいつはお前に任せる。」 そう言うと一枚の写真を渡される。 そこにはとても優しそうな男が写っていた。 「一条 晃、四十七歳。それが今回のターゲットだ。」 「あの、他の資料は?」 「ない。だが居場所はきちんと掴んでる。」 そう言うと今度は一枚の紙を渡される。 そこに書かれている地図には、ほとんど建物はなく、代わりに複数の歪んだ円が書かれていた。 「山の上ですか?」 「ああ、訳あって今はそこで暮らしているらしい。」 いかにも怪しい依頼だ。 しかし、断る理由もない。 「やってくれるか?」 「はい、了解しました。」 俺は写真と地図をポケットにしまい込んだ。
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