第二章

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その後俺はすぐに家に戻った。 今、彼と同じ空間にいるのは耐えがたいものがあったのだ。 ベッドの上に横たわるとポケットの中から写真を取り出した。 写真の人物はどこからどう見ても人に恨まれるような人間ではなさそうだ。 だが人間というものは外見では判断できない。 こんなに優しい顔をした人でも、殺したいほど恨まれてしまう。 それが些細な理由でも、人は死んで罪を償ってもらおうとする。 なんの解決にもなるはずがないのに。 でも、俺達はただ指示に従って人を殺す。 疑問を持ったところで、何も変わることはないのだ。 でも、今回はどうしていつもの資料がないのだろうか。 俺達はいつもターゲットの詳細が記された資料をもらう。 それには生年月日から家族構成、生い立ちなど様々なことが記されている。 俺達はそれを把握した上で様々な作戦を考える。 でも、今回はそれがない。 別に殺す上で支障はないが、今までになかったことなので、何か引っかかるものがあった。 それにいつもなら皆がいる昼間に指令は言い渡される。 例えたった一人の任務でもだ。 だがこの件は明らかに個人的な依頼だ。 俺が偶然あの場に一人でいたからか。 それとも、初めから俺に頼むつもりだったのか。 それは今の俺にはわからない。
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