第一章

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目の前には血の海が広がっている。 これで何人目になるのだろう。 俺はそう思いながらその場を後にした。 「で、今日も失敗したのか?」 静まり返った室内に低い声だけが響き渡る。 組織のトップが話している時は、誰も口を開かない。 「お前、これで何回目だ?」 「す、すみません。」 最近入ったばかりの新入りが、また今日も殺せずに帰ってきた。 俺たちの組織は依頼を受けて人を殺す。 ターゲットは一般人からSPがついている大物まで様々だ。 ただ一つだけ言えるのが、一度失敗したら、その人物は簡単には殺せない。 まだ、手を出していない状態だったらいいが、少しでも接触をしてしまったら、相手は警戒心を強める。 ましてや顔を見られたりなどしたら、もうおしまいだ。 今、目の前で怒られている彼は、まだ殺すことに対して恐怖心を抱いているらしく、いつも怖気づいて帰ってくる。 「まあいい、次はちゃんとやれよ。」 「は、はい。」 そう言うと彼は俺らのいる方へと戻ってくる。 「尋。」 「はい。」 「後処理を頼む。」 「了解しました。」 そして当たり前のように、失敗した仕事は俺へと流れてくる。
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